現在の日本ではアロマが普及されてきましたね。
そんな中、注目されているのが日本の精油(ジャパニーズアロマ)です。
アロマセラピーの発祥は西洋ですが、日本でも昔から植物の効能を利用して、健康を維持したり、アロマセラピーに近い植物療法は身近に行われてきました。
伝統文化にも深く関わりのある和の精油は、西洋の香りより受け入れやすく、ほっとした気持ちになるでしょう。
ここでは医療としてではなく、家庭で心身のリラックスと緊張による痛みを緩和し健やかに暮らせるよう和精油の話題を取りあげます。
和精油の中の一つに「クロモジ」がありますが、古くからこの精油をクロモジ油といい石鹸や香水の香料にされたりしてきました。
クロモジは、本州、四国、九州などの山地に自生するクスノキ科の樹木です。漢字では「黒文字」と書き、樹皮には黒い斑点があります。
今回はこのクロモジ精油(アロマ)の効能と成分についてと、香りや肌への効果と赤ちゃんにOKなのかという話題をお届けします。
また、抽出方法や作り方も徹底紹介します!
クロモジの香りは?
クロモジの香りは甘くさわやかな香りです。
言葉で表現すると、黒糖のような甘さの中にウッディーな香りを感じます。
精油は主に枝と葉で抽出され、ウッド系なのに花のような甘さがあるのが魅力です。
この香りに癒され、リフレッシュすることができるでしょう。ブレンドにも深みを与えます。
香りの強さ…中
強くもなく弱くもない、ほど良い強さです。
香りのノート…ミドルノート
香りの持続時間は3~4時間程になります。
鎮静作用、中枢神経抑制作用のある香りです。
禁忌事項が少ないことも魅力ですが、クスノキ科の植物は肌への刺激が強い場合があるので以下のことには注意をしてください.。
- 敏感肌の方には控えめに使用しましょう。
- 妊娠中、授乳中の使用は避けましょう。
クロモジ精油は赤ちゃんにもOK?
アロママッサージや沐浴などを行いたい場合は、3歳以上から濃度を大人の1/10にして始められます。
クロモジはおむつかぶれにも効果があるので、赤ちゃんの身体につける場合はハーブウォーターを使用すると良いでしょう。
赤ちゃんが神経過敏になっている時に、クロモジの芳香浴で落ち着きを取り戻し、寝つきが良くなります。
■赤ちゃんへの芳香浴の仕方
ディフューザーなどは避け、お湯の中へアロマを1~2滴垂らして芳香させたり、コットンに1滴垂らして頭から遠い場所に置いて芳香させるなどで様子をみましょう。
低濃度で使用し、数時間おきに換気を心がけてください。
- 赤ちゃんのアロマセラピーは生後6か月からにしましょう。
積極的に行って良いのですが、6か月までは赤ちゃんが母乳の匂いとアロマの匂いを嗅ぎ分けられず、不安になることがあるので我慢しましょう。 - 赤ちゃんの芳香浴を行うときの濃度は大人の半分以下の量で行ってください。
6ヵ月を過ぎたあたりから芳香浴のみ行うことができます。
クロモジ精油(アロマ)の効果効能と成分
クロモジは高級つまようじの原料として使われてきたことで有名ですが、「ウショウ」という名の和漢の生薬でもあり薬用酒の原料にも使われています。
クロモジ精油の効果効能と成分をご紹介していきましょう。
心への作用
鎮静作用があり、興奮や苛立ちを沈めて心を落ち着かせます。
精神安定化、安眠効果を持つ精油なので、強いストレスを感じている方に使用すると良いでしょう。
- イライラを鎮めて、リラックスさせる。
- 孤独や悲しみを解消させる。
- 神経を落ち着かせて、安眠効果がある。
- 高ぶった神経を落ち着かせる。
身体への作用
緊張がゆるむので痛みをやわらげ、筋肉のコリを改善するのに最適です。殺菌、防虫、消臭効果で清潔にします。
肌の炎症を抑え、温め、柔らかくするため美容効果も期待できます。
- 痛みをやわらげる。
- 筋肉のコリをほぐす。
- 保温効果がある。
- 血液循環を促進させる。
- 胃や腸内の異常発酵の抑制。
- 毛髪の育成。
- 皮膚をやわらかくする。強い殺菌、防虫、消臭力。
成分
主な成分は・・リナロール、ゲラニオール、テルピネン-4-オールです。
- リナロール…鎮静、鎮痛、抗不安、抗炎症、抗菌、抗真菌、抗ウイルス
- ゲラニオール…強力な抗菌、抗真菌、抗ウイルス、皮膚弾力性回復、収れん、抗ガン
- テルピネン-4-オール…抗菌、抗真菌、抗炎症、鎮静、鎮咳、去痰
クロモジの精油は西洋のローズウッドと同じ成分(リナロール、ゲラニオール)が含まれていて、その成分の量はローズウッドを上回っています。
主成分のリナロールは高いリラックス効果があるので、神経系を穏やかにする効能に優れた精油でしょう。
マリリン・モンローが愛用して有名になったシャネル№5は、ローズウッドの香りが主成分でした。
不眠症の解消のため使っていたと言われています。
また注目するのが、寄生性皮膚病に効果があるので、ペットのケアとしても効果的です。
クロモジ精油の肌への効果とケア
クロモジの持つ成分に皮膚の弾力性回復などがあるように、ハリのある肌に近づくことができます。
肌ケアに優れているので、その作用とケアの仕方を紹介します。
- 保湿作用⇒肌の乾燥が気になる時に、保湿効果の高い化粧水になる。
お風呂上りや乾燥している肌にローションとして使いましょう。クロモジハーブウォーターを使用すると良いでしょう。
- 抗菌作用⇒ニキビ、おでき、あせも、湿疹、髭剃り負けなどが気になる時のフェイスマッサージに。
植物オイルにクロモジ精油を希釈して、手のひらや指を使って顔全体をマッサージしましょう。
- 抗真菌作用⇒水虫対策やフットケアに。
植物オイルにクロモジ精油を希釈して、水虫の患部やかかとのひび割れている部分に塗布します。
- 美白効果⇒紫外線の予防、日焼け後のケアのなる。目の下のクマが気になる時のアイパック。
コットン又はティッシュにクロモジハーブウォーターを含ませ、目の下や日焼けをしてしまった部分に置いてパックします。
特に気になる場合は、美容液にクロモジの精油を希釈してパックをしてください。
クロモジ精油の抽出方法や作り方
精油の作り方を知れば、精油にクロモジの力が凝縮されている為、今まで紹介してきた沢山の効能を持っていることが分かると思います。
そこで、埼玉県長瀞町でクロモジの蒸留を行っている井上ハーブ研究所へ実際に行ってきて、クロモジ精油とハーブウォーターの蒸留をしてきました。
その抽出方法を解説します!
現在、井上ハーブ研究所では丁寧に手作業の蒸留を行っているそうなのですが、年に60回ほどは蒸留をするそうです。
- クロモジの採取
9月~11月にトラックで山の中へクロモジの樹木を採取しに行きます。*伐採の許可を取って行っています。 - 乾燥
採ってきたクロモジを吊るして、2週間~3週間前後乾燥させて葉と枝に切ります。 - 蒸留の準備
7キロ前後の釜に、葉と枝をつめて7ℓほどの水を入れます。 - 蒸留
釜に火をつけ、2時間~4時間前後蒸留します。 - 完成
今回は原料(枝、葉)5.2kgに対して14.2mlのアロマが抽出できました。
これは水蒸気蒸留法という抽出方法です。
クロモジの場合は、だいたい1kgの原料に対してアロマは3ml~5mlしか採れないので貴重な精油といえるでしょう。
5ml程のアロマを作るにも大量の原材料が必要だということです。
精油の採取は釜を用いた水蒸気蒸留法という方法が多く使われます。この水蒸気蒸留法のやり方も簡単に紹介しておきます。
■水蒸気蒸留法のやり方
- 原料の入った釜の下で火を焚き、加熱します。
- 蒸気と一緒に芳香成分が上昇し、この蒸気を冷却パイプに集め冷却します。
- 水蒸気は液体になるので溜めておきます。
- 溜まった液体は上部に精油(アロマ)、下部に芳香蒸留水(ハーブウォーター)ができます。
精油は水より軽いため、上部に浮く性質があります。
採るアロマの種類により抽出量は異なり、短時間に高圧・高温で蒸留すると量は沢山採れますが、品質に影響を及ぼしてしまいます。良質なアロマを抽出するにはじっくり時間をかける必要があります。
蒸留釜はキッチンで使えるような小さなものから、二階建ての家屋くらい大きなものまであります。
家庭用の蒸留器はネットショップでも沢山売られているので、興味があれば検索してみてください^^
江戸時代に薬油や酒類などを蒸留する為に用いたらんびきや、アルコールランプを使用する本格的な釜の蒸留器などがあります。楽天で売られている蒸留器はこちらの商品です。参考にしてみて下さい。
*精油は沢山の原料を使うので、一般的に家庭で使うものはハーブウォーターの抽出に用いるものが多いです。
このハーブウォーターにも植物の芳香成分が含まれている為、十分効果は期待できます。
おわりに
クロモジ精油(アロマ)の効果効能と成分や抽出方法や作り方も徹底紹介しました。
なかなかアロマと結びつくイメージがないクロモジですが、こんなに沢山の薬理作用や魅力的な成分を持っているので、この先人気の出てくる和精油だと思います!
和精油は国産なので、産地がはっきりしているという点でも安心感があり、日本人の体質にも合っているといえます。
行ってみたい土地の和精油を購入して、自宅でも国内旅行しているような気分になったり、和室で芳香してより日本の良さを演出したりと楽しみ方も沢山あります。
上級になってきたら、家庭用の蒸留器で蒸留してみるのも新しい発見があるかもしれないので、これを機会にチャレンジしてみてください^^